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2026.01.27

お知らせ

時間・距離・速度─宇宙リモートセンシング

今から30年以上前の1990年代、横浜・山下町でプログラマーとしてデビューした頃のことを、ふと思い出した。
当時の体重は53キロ。
今と比べると……+30数キロ。いや、細かい話はやめておこう。話を戻す。

右から二番目の男性が筆者である。















当時から、若い世代と話す場面では、いつも同じ話をしていた気がする。
自分の中では、かなり“決め台詞”だった。

「時間・距離・速度を超える。それがITだ」

今思えば、ずいぶん大きく出た話だが、
若さとは、そういうものだし、IT業界もまだ夢を語れる時代だった。
当時の横浜市で、プログラマーを職業にしている人も、企業も、決して多くはなかった。
正確な統計はないが、求人企業は数社程度だったが、今では、数百倍、体感的には千倍規模にまで広がっている。
当時は、ITが産業構造を変えるという実感は、まだ一部の人のものだった。
だが結果として、ITは企業経営の前提条件となり、AIやDXという言葉が生まれ、社会の意思決定の速度そのものを変えてきた。
そして今、同じ構図が宇宙とリモートセンシングの分野で起きつつある。


さて「時間・距離・速度」、経営とは、本質的に三つの制約との戦いである。

時間:意思決定の猶予は限られている
距離:現場と経営の視点は常に乖離する
速度:環境変化は人の想定より速い

DXの本質は、IT導入そのものではない。この三つの制約をいかに縮め、乗り越えるかにある。

その文脈で見ると、衛星リモートセンシングは、極めて経営的な技術だ。

1.距離:地方こそ、宇宙視点が効く


地方創生において、距離はしばしばハンディと語られる。人が少ない、情報が遅い、現場に行きづらい。
しかし宇宙から見れば、都市も地方も等距離にある。
衛星は、数百km〜数万km上空から、農地、森林、河川、都市インフラ、沿岸部を同じ解像度で観測する。
これは地方にとって、大きな意味を持つ。
広域農地の生産性把握、森林・水資源の長期管理、インフラ老朽化の俯瞰的把握、距離があるからこそ、全体最適の判断が可能になる。

2.速度:現場より早く、兆候を掴む


経営判断で最も高くつくのは、「遅れ」だ。
災害、設備劣化、作物不良、人口変動。起きてから対処すると、コストは指数関数的に増える。
衛星データは、変化の兆候を早期に捉える。
災害前後の即時把握、作物の生育異常の検知、インフラの微細な変位の把握、これは単なる技術革新ではない。経営リスクを構造的に下げる仕組みである。

3.時間:データが「地域の記憶」になる


地方創生は、短期施策では成果が出ない。5年、10年、20年という時間軸が必要だ。
リモートセンシングの価値は、時間を味方につけられることにある。
過去と現在を比較できる、季節性・周期性を把握できる、施策の効果を客観的に検証できる、衛星データは、自治体や地域にとっての客観的な履歴書になる。

宇宙データは「ロマン」から「経営資源」へ、かつて宇宙は、夢や憧れの対象だった。
だが今、宇宙データは意思決定インフラになりつつある。
勘や経験を否定するものではなく、むしろ、経験値を拡張する装置だ。すごい時代に生まれた。

4.結びにかえて


時間・距離・速度。
それらは、経営と地方創生においても最大の制約条件だ。
リモートセンシングは、その制約を一段引き上げた視点から捉え直し、行動可能な判断材料へと変換する。
宇宙を知ることは、地方を、企業を、そして未来をより賢く経営するための準備である。
遠くを見るからこそ、地域の「次の一手」が、はっきりと見えてくる。
うちも都心部ではなく町田市、北海道や沖縄から他視点で見ているのも、この理由からだ。

地方の現場知 × 宇宙からの俯瞰データ、この掛け算が、DXの本質である。
小さな組織が、大きなスケールを使いこなす時代、衛星を打ち上げる必要はない。
データはすでに存在し、使われるのを待っているわけだ。使わない手はない。


この分野は、ほんとうにロマンがある。未知で同時に現実だ。ではまた。