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2026.01.30
お知らせ
ライスカレーというドラマ、知っていますか?
1986年、フジテレビで放送された名作テレビドラマ
『ライスカレー』を、ふと思い出すことがある。
舞台はカナダ。
若者たちが「ライスカレー」という、どこか不格好で、しかし忘れられない名前の店に、ささやかな夢を託す物語だ。
都会的でも、洗練されてもいない。
だが、自分たちの場所を、自分たちの手でつくろうとする必死さと、不器用な誇りが、そこにはあった。
「なぜ、ここでやるのか」
地方で事業をやる。
Uターンを選ぶ。
地方創生に挑戦する。
そのたびに、必ず投げかけられる問いがある。
なぜ、わざわざそこなのか。
効率だけを考えれば、答えは簡単だ。
人も、情報も、資本も集まる都市でやった方がいいに決まっている。
それでも私たちビックボイスは、
北海道や沖縄、そして東京でも都心ではなく市町村部――つまり「地方」を拠点に、DXやシステム開発、コンサルティングに取り組んできた。
ドラマの登場人物たちは、決して「勝ち筋」からスタートしたわけではない。
寒さも、言葉も、文化も、不利な条件ばかり。
それでも彼らは、その場所で生きることを選んだ。
地方での起業やUターンも、よく似ている。
・仕事はあるのか
・本当に続くのか
・戻る意味はあるのか
合理的に考えれば、不安材料はいくらでも出てくる。
地方創生は、ロマンではなく編集だ。
私たちが地方創生で大切にしているのは、
「がんばろう」「夢を語ろう」といった精神論ではない。
・地域にすでにある価値
・人の営み
・小さな仕事
・何気ない日常
それらを編集し、テクノロジーでつなぎ直すこと。
『ライスカレー』が描いたのも、派手な成功ではなく、日々を積み重ねる姿だった。
Uターンという言葉には、「元に戻る」という響きがある。
だが、実際は違う。
一度、外で学び、働き、視野を広げたうえで、
故郷を別の視点で見直す行為だ。
それは過去への回帰ではなく、未来への再設計に近い。
ドラマの中の「ライスカレー」は、現実にはもう存在しない。
だが、その精神は、今も各地に息づいている。
地方で起業する人。
Uターンを選ぶ若者。
地域で新しい価値をつくろうとするチーム。
その一つひとつが、現代版のライスカレーなのだと思う。
私たちビックボイスも、
そんな選択のそばで、テクノロジーと編集の力を使い続けたい。
少し不器用で、でも忘れられない存在でありたいと思いながら。
30年前、東京でITの世界に身を置いていた頃、
まさか自分が、富良野の近く、芦別にITオフィスを構えるとは思ってもいなかった。
ある日、本当に「ふとしたきっかけ」で、一人の人物と出会う。
倉本聰さんの親友であり、『北の国から』という名作に欠かせない存在、
富良野の名店「くまげら」の森本さんだ。
30年かけて場所を変え、仕事を変え、立場を変え、
その先で、あの物語の“内側”にいた人と出会う。
人生とは不思議なものだと思う。
『北の国から』は、地方創生のドラマでも、観光PRでもない。
あれは、生き方そのものを描いた記録だったのだと、
森本さんの言葉や佇まいに触れて、あらためて思った。

森本さんと「くまげら」にて
派手な成功談はない。
効率的な戦略もない。
あるのは、人と土地と時間が、静かに積み重なっていく姿だけだ。
芦別にある私たちのITオフィスは、元保育園を再活用したもので、決して華やかではない。
だが、ここで仕事をし、ここで考え、ここで人と向き合っている。
それは、かつてドラマの中で描かれた
ライスカレーの店や、五郎の家と、どこか似ている。
地方創生とは、計画通りに進むものではない。
こうした偶然の連なりを、どう受け取り、どう続けるか。
その積み重ねなのだと思う。
2020年、システムエンジニアが店員のカフェ
2020年、芦別で期間限定のカフェを実施したことがある。
企画はシンプルだ。
システムエンジニアが、店員として店に立つ。
目的は売上ではない。
ITやDXを語るためのイベントでもない。
これは地域交流デザインとして行った試みだった。

最後に
最後に、付け加えておきたいことがある。
倉本聰さんのファンは、本当に多い。
言うまでもなく、私もその一人だ。
ただ――
見知らぬ土地で、システムエンジニアが店に立ち、地域交流デザインとしてカフェを開き、
その目玉にカレーライスを据え、結果として“ライスカレー的な場”を現実に実装した人間は、
そう多くはないのではなかろうか、と思うことがある。
地方創生だの、DXだのと、立派な言葉を並べてきたが、
やっていることは案外、単純で、不器用で、
そして少しだけ、遊び心のあることなのかもしれない。
そんなことを思いながら、
私は時折ひとり、静かに笑ってしまうのである。
※(テレビドラマ『ライスカレー』/1986年・フジテレビ/脚本:倉本聰)
異国の地カナダを舞台に、若者たちが小さな店「ライスカレー」に夢を託し、自分たちの居場所を模索する姿を描いた青春ドラマ。
※(テレビドラマ『北の国から』/1981年・フジテレビ/脚本:倉本聰)
北海道・富良野を舞台に、人と自然、時間の積み重ねの中で生きる家族の姿を静かに描いた、日本のテレビ史に残る名作ドラマ。
